おそらくは物心ついたころから病気なので、わたしの人格はすっかり病気と癒着していると考えれば、そのふたつを切り分けることに意味はないのかもしれません。
順を追ってここまでの生活を思い起こしていきましょう。
2021年9月:退職
3月ごろから体調を崩して休みがちだった仕事を契約期間満了という形で退職しました。正社員だったら休職という選択肢もあったのかもしれませんが、パートなので「元気になったらまた雇うから、今は養生してね」と言われてひとまず退職、ということに。
この職場で一度は生活保護を抜けるまできちんと働いていたのですが、体調を崩して勤務時間を減らしてもらったり、休みが増えたりして収入が減り生活保護に逆戻りしています。それで新しく担当になったケースワーカーとバチギレ電話したりもしたのですが、まあそれは別の話だ。
2021年10月〜2022年1月:無職
この期間は傷病手当金をもらったり、お店が休業要請を受けてどこもやってなかったりして自宅でのんきに過ごしていました。
常に記憶はあいまいなので何も覚えていませんが、たぶんそれなりに安定して寝起きもし、ごはんをこしらえてたべたり、FF14やったり、気ままかつ比較的すこやかに暮らしていたと思います。主治医に「そろそろ家でボーッとしてても何も変わらんので仕事に戻りたいです」って言って「そうだろうね〜意見書書いとくわ」とすんなり通る程度には症状も安定していたはずです。
2022年2月〜4月:ゴミクズ試用期間
ところが約束通りもう一回雇ってもらった職場で、なんかいきなり「行きたくない」の念にとらわれて全然出勤できない、という状態に陥ります。仕事に行けばやることもたくさんあってしゃきしゃき仕事もするし、職場になんの不満もないし、なんなら朝起きてごはんをたべて「今日も頑張るぞ!」って思っているのに、「この時間に家を出ないと間に合わない」というたった10分か15分の間だけ「どうしてもいま家を出たくない」とのたうち苦しんで結局間に合わなくなって「休みます……」と電話をし、がっくりきてそのまま寝込む、みたいな日々が続きました。
主治医にも何回か相談し、抗不安薬を処方してもらったり、就業・生活相談センターに相談してみたり、会社の人事部の精神保健福祉士さんとも何度も面談したのですが、どうしてもダメでした。
試用期間のはじめは「ちょっと昨日頑張りすぎたかな?」とか「生活リズムをもっと整えないとダメかも」とかわりと軽く考えていたのですが、どうやらこれは一時的な疲れや生活習慣の問題ではなさそうだ、と気づくのが遅すぎました。
主治医によれば「統合失調症患者の傾向として、新しいことをはじめたばかりのときはドーパミンがたくさん出てすごく頑張れるが、環境に慣れるに従ってドーパミンが出にくくなり陰性症状の無気力や倦怠感が強く出る」というような話でした。
この出た日より休んだ日のほうが多いような試用期間のおわりに、私は「どうしてもダメです。行こうとすると体が動きません」と白旗をあげ、職を失うかわりにひとときの安寧を選びました。だって土日は元気に洗濯したり料理したりしてるのに、平日は日が暮れてから起きるんじゃどう考えても「仕事に行かなきゃ」のせいで動けなくなっているとしか思えません。仕事に行けないのがストレスになって病気を悪化させるくらいなら無職のまますこやかに生きよう、というあきらめを、それでも納得して受け入れたわけではありませんが、今はそれしかないのかな、と思って泣いています。
つらい
- わりと条件や環境のいい職場だったのにみすみす逃したのがつらい
- 働くことでもっと元気になろうと思っていたのに悪化させたのがつらい
- また貧しい暮らしをしないといけないのがつらい
- そもそも働くのに向いてないんじゃないかと思ってつらい
いろいろな「つらい」がありますが、ひとつひとつ向き合っていきましょう。
わりと条件や環境のいい職場だったのにみすみす逃したのがつらい
条件はまあ、福利厚生がちゃんとしてるとか、何につけても手堅いくらいでホワイト企業の中ではごく普通かなあと思わないでもないのですが、今までまともな職場で働いたことのなかった私には衝撃的な「良さ」ばかりでした。
それに、何より職場の皆さんが優しくて、何か配慮できることはないかいつも気にかけてくださって、私が仕事をすれば「よく気がつくし本当に頼りになる」とめちゃくちゃ評価してくれて、そんな期待を裏切ってしまったのもつらいし、私は真剣にここでもっと長く働きたかったんです。
自分で「行きたくない」って言っておきながらとんだ矛盾だとは思いますが、本当に職場にも仕事の内容にもなんの悪いところもなかったんです。だからこそ自分にも理解できない理由で行けなくなってしまったのが本当につらいし悔しい。
働くことでもっと元気になろうと思っていたのに悪化させたのがつらい
休職というか間の無職の期間が4ヶ月くらいというのは、本社の人事的には「ちょっと短いんじゃないか、戻るのが早すぎるのではないか」という危惧があったそうです。
でも1月ごろの私は「これ以上家でじっとしていても何かが良くなることはないだろう」と判断していましたし、その判断に間違いはなかったと今でも思っています。
ただ客観的に見れば、人事部の危惧が的中したというか「それ見たことか」という結果であるのも理解しています。
面談の中で人事部の精神保健福祉士さんには「まだ一般企業に就職する段階ではなかったのではないか、就労移行支援や就労継続支援A型事業所で生活リズムを整えてきてはどうか」とも提案されました。でも、今まで私は移行支援もA型事業所も利用し、どちらも散々な結果に終わっています。一時的にでも働き、収入を得て生活保護まで抜けることができたのは「一般企業の障害者雇用枠」という、この職場だけでした。
思うに私は自分を安く見積もられるのが大嫌いです。言い方は悪いですが、軽作業や単純な労働を前提とした訓練では虚しくなってしまって続ける意欲がわきません。以前利用したA型事業所はそもそもなんの仕事も任せてもらえなかったので論外です。「毎日行って帰ってくるだけ」ができなければ仕事もできない、というのはそれはそのとおりでしょうが、仕事もないのに毎日行って帰ってくるだけなのは穴を掘って埋め戻す拷問と同じです。
そもそも生活リズムの問題でもなかったのです。「慣れから来る飽き」というと聞こえは悪いですが、要はそれの致命的なやつです。解決法があるとしたら生活のさまざまなことを習慣化するのではなく、むしろ仕事のまわりを変化で彩ることでした。脳に新しい刺激を与えなければ動けなくなっていく一方です。
だからこそ働かなければこれ以上何も良くなることはない、と今も思っています。でも働けなかった。自分にもよくわからないのになんでか職場に行けなくなってしまった。それどころか「行かなきゃ」と思うだけで日が暮れるまで布団から起き上がれないような状態になってしまった。つらい。
また貧しい暮らしをしないといけないのがつらい
そもそも試用期間を半分も出勤していないので、本雇用はないでしょう。また無職です。挫折したことそのものもつらいですが、年金と生活保護でちまちまと必要なものも買えない暮らしをまたするのかと思うとめそめそします。
じゃあ新しい仕事を探せばいいじゃないか、と自分でも思います。でも新しい仕事を探して応募したとして、この2ヶ月の試用期間で終わってしまった仕事のことをなんて言ったらいいんでしょうか。正直に言ったとして、職場に何の問題もなかったのに行けなくなってしまったのなら問題があるのは私です。同じことがまた起こるだろうと考える面接官の割合は9割を超えるんではないでしょうか。まともな職場ならまずこんな経歴の人間は雇わないでしょう。
次こそ長く働き続けたい、とは思っています。でもそのために何ができるかよくわからない。そもそもなんで働き続けられなかったのかもよくわかっていないのに、長く働き続けるために何ができるんでしょうか。
そもそも働くのに向いてないんじゃないかと思ってつらい
「行けば仕事はちゃんとするし、職場の人たちからの評価も高い」のに「行けない」という一点で職そのものまで失ってしまうのは、つまり「能力はあるが、その能力を使う場に出られない」ということです。今回は職場は私を迎え入れる意思があったので、「場に恵まれない」という表現はふさわしくないでしょう。あくまでも問題があったのは私です。
働きたい気持ちはあるし、働けるだけの能力もあって、それなのに「働く場所に行けない」から働けなくて、貧しくみじめな生活をしている。つらい。
今は在宅勤務とかもあるし、いっそフリーランスとか目指してもいいんじゃない?とか、考えることもあります。でも在宅勤務はそれはそれで「やりたくない」にきっと逆らえないし、フリーランスも身のまわりの管理をまともにできない人間には難しいんじゃないでしょうか。いやわからん、やってみないとなんもわからんけど、どのみち自分で仕事を見つけないとだめだ。
職業には向かない女
なんか……好きなことだけ好きなときにやってたいんですよね!!
急に占星術の話をすると、わたしは天頂近くに天王星と海王星を持っています。天王星は「革新、変化」の星で、海王星は「理想や夢の世界」を表すとされています。そう言うとなんかいい感じに聞こえますが、この二つの星は決して「良い星」とはされてきませんでした。どちらかというと「凶星」に分類されます。
天頂はその人の「社会的到達点」を表すとされています。ここに「見たこともないような新しい世界」の天王星と、「現実離れした夢や陶酔」の海王星が並んでいると考えると、どうでしょう……ものすごく、現行の社会制度に馴染まなさそうな感じがしませんか?
あくまでもわたしの解釈なので、プロの先生が見ればまた別の解釈があるかもしれません。ただ、わたしがこの天頂付近の天王星・海王星を見たときに思ったのは「これは就職はだめかもしれん」でした。
おそらく(というか現実を見ても確実に)どんな仕事でもやればできます。ただ、それが向いているか、続くかというと、ほとんどの仕事は向いてもいないし続きもしないんではないでしょうか。
なにしろ自分がやりたいことを、やりたいときに、やりたいだけやっていたいので、1日に決まった時間だけ仕事に拘束されるのもけっこうなストレスです。だからこそフリーランスにも向いていないと思います(仕事を探さないと誰も与えてくれないのに、自分がやりたくないときはやらないため)。
今日も職場に「ダメです」の泣きの電話を入れたあと、この日記を書きながら自分のチャートの天頂に輝く天王星と海王星をボーッと眺めています。きみたちはどんな生き方をわたしに示しているのでしょうか、と考えながら、社会生活に適合できないままでいます。