でも、たのしい。
スタミュみてください。
正直、きらびやかな設定に抵抗がある
スタミュに限った話じゃないんですけど、自分の美学の問題で、パッと見て読めない名前とか、こみいった設定……例えば、華桜会みたいな組織が学園のトップに君臨していて、それぞれ後輩を指導していて、その名前は……キャラ設定は……みたいなのを滔々と語られると、うっもういいですお腹いっぱいです……ってなりやすいタイプです。
現実味のない整然と名付けられ秩序立てられたキャラ設定をガーッと並べられると、封じられた右目が疼くっていうか……自分の中で禁じてきたことなので、そんなんやっていいのか、って戸惑ってしまうんだと思います。
スタミュは私にとって、ちょっと苦手なタイプの作品です。
王道詰め合わせた幕の内弁当
ストーリー展開も、正直言って新鮮さを感じることはあんまりなかったかな? と思います。
象徴的だな、と思っているのが天花寺翔というキャラクター。
高慢な梨園の貴公子で、「和」というか「カブキ」を前面に押し出したキャラクターなんですが、猫だけが唯一の友達で、おぼっちゃま育ちのお手本みたいなすっとぼけた発言もするし、ファストフード初体験ネタをやられたときは……い、いまどきそれやるの!? って思いました。
とにかく王道で殴ってくる感じなんですよね。天花寺くんだけではなく、他のキャラクターもお手本どおりというか、私の書くような根性曲がったひねくれ方を一切していない。素直で、頑張り屋で、キラキラしていて、まっすぐに高みを目指していて……
そのまぶしさが見ていてつらかったのかもしれません。
だって、スターの物語だから
ここまでつれーわしんどいわ苦手だわってことばかり書いてきましたが、一期とスタミュミュ見終わった時点で、私はこの作品、かなり好きです。
スタミュはミュージカル俳優の卵たちのお話です。
彼らは舞台の上に存在し、まぶしいライトをいっぱいに浴びて輝いている。
闇とか影とか、いらないんです。
舞台上は夢と希望で満ちていて、困難は力を合わせて乗り越えるためにあって、キラキラな設定もお約束のストーリー展開も、必要な舞台装置なんです。
私事で恐縮ですが、私がファンタジーを評するときに必ず言うことがあります。
「背景は書き割りでいいから裏が見えないように描け」
スタミュにとって、人間のどうしようもない部分とか、しみったれた日常とか、そういうのは見せると物語のほころびになってしまう。
裏の見えない完全な舞台装置を周到に組んである作品なんだと気づいて、私はスタミュめちゃめちゃ評価しました。
舞台の上にいる限り、スターは輝いていないといけないんです。
いかに私が舞台を降りた人間の姿を書くことに執念を燃やしている書き手だとはいえ、むしろ、だからこそ、舞台の上を全力で描くこの作品を評価しないわけにはいかない。物語にかける熱量はちゃんとわかります。
スタミュ、いい作品だと思います。
蛇足ですけど、ミュージカルだから
ミュージカルなんで、突然別世界に入って歌い出す演出に耐えられない人には向いてないです。
でも、それもまた用意された舞台装置なんだな〜。
とりあえずこれから二期追いかけます。