小説を書くための投資、何ができるだろう

2017年12月13日
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頭から宣伝ですみませんが、コバルトの短編小説新人賞で最終選考に残ったのでサイトに掲載されました。伊藤影踏「高原にさす光」よかったら読んでくださいね。イケ獣王様(未来永劫人間にならない)のもとに嫁入りしたちいさい和蕃公主のお話です。

で、たまには小説の書き方みたいなことも記事にしようかな、と思って書きました。

先日こんなツイートが回ってきました。

ついリプしてしまったのでツリーにわたしのマジレスがぶら下がっていてお恥ずかしいのですが、わたしは要するに「大学の学費です」とお答えしました。小説書くために行ったわけでも自分の金で行ったわけでもないんですが、小説を書くためにいちばん役に立っていていちばん金額が多くかかっているのは大学の勉強だな、と。

大学の勉強といっても、講義の内容やゼミで読んだ文献が直接ネタになっているわけではありません。どちらかというと、資料の探し方、読み方を学べたこと(あと、大学図書館の利用証)が一生ものの財産だな、と思っています。

書く前に読むとして、何を読むか

ネタ探しならWikipediaで十分かもしれませんね。

でも、研究書や学術論文がわたしたちに与えてくれる情報量はすごいんです。すごいがゆえに、いきなり論文をあさっても直接ネタにはならないことがほとんどです。

わたしの学んだ基本的な資料の探し方は、

  1. 調べたいキーワードをまとめる(例:昔の中国にあった茶館について調べたい→中国、茶館、明代or清代……)
  2. 蔵書検索もしくは論文検索で調べたいことに関連した本もしくは論文を見つける(ニッチなキーワードだと本にまとまっていることはあんまりないです)(難しすぎたり微妙に目的とずれていてもひとまずOK)
  3. 調べたかったことの手がかりがつかめそうな参考文献や注をたどって次の文献へ

の繰り返しです。

ここで重要なのは、参考文献をたどる(注を読む)ことです。

例えば論文をひとつ見つけたら、その論文の「はじめに」では必ず研究の概況や先行研究について触れられています。自分で「このジャンル初めてだけど、とりあえず何を押さえればいいのかな……」と悩むより手っ取り早く基礎知識へのとっかかりがつかめます。

さらに、複数の著者の論文を比べながら読むことで、知識の偏りをなくせます。わたしが中二病まっさかりだったころあたりから「これ一冊買えばファンタジーが書ける!図解なんちゃらかんちゃら」みたいな本どんどん増えてきていますが、それはその「図解なんちゃらかんちゃら」を書いた人のフィルターを通した情報でしかないです。自分で地道に集めた知識や情報にはかないません。

また、自分で地道に情報を集めていると、情報どうしが食い違っていたりまだ研究が及んでいなくてよくわからないこともあります。そういうところの整合性をつけるために自分で判断したり、隙間を埋めたりする想像力は小説書きにとって最も大事な能力です。

蛇足ですが、「図解なんちゃらかんちゃら」系の本ってけっこう高いですよね。かさばるし。しかし、学術論文は無料でPDFダウンロードできるものがけっこうあります(いちばん読みたいやつに限ってできなかったりもしますが)。

とりあえずcinii。「論文検索」でキーワードを入力して、「本文あり」をクリックして検索すれば本文をダウンロードできるものだけ表示されます。

小説を書くために小説を読むこと

ここまで「いや、書きたいのは論文じゃなくて小説なんですけど……」と突っ込まれそうなことをつらつらと書いてきました。

確かに小説を読むことは大事です。論文だけ読んでいても小説が書けるようにはなりません。

でも、漫然と小説を読んでいても、やっぱり小説が書けるようにはならないと思います。

大事なのは吸収するために意識して読むことです。

英単語も単語帳を眺めているだけでは頭に入ってこないって言いませんか?

それと同じで、小説を読むときも「この情景はこんなふうに表現したらきれいなんだな」とか、「こういう語り方もあるのか」と気づきながら読むことで、自分のものにすることができます。

しかし、そうして吸収できるのは小説を書くための技法です。

小説に限らず、物語を作るためには知識が必要です。

小説で知識を得ることも、確かにあるかもしれませんね。でも、その知識が事実かどうかは、作家は保証してくれません。それに、小説から得られる知識は、やはりその作家のフィルターを通したものでしかありません。さらにいえば、その小説を書くために必要だった知識が詰まっているのみで、別にあなたの小説を書くための知識を提供してくれているわけではないのです。つまり、足りない部分があればやっぱり自分で調べるしかないということ。

知識と技法を能動的に自分のものにしていって初めて良い小説が書けるのだとわたしは思っています。

だからなんか、お金っていうより時間じゃない?

時は金なりって言いますけど、他に何もせずに一心不乱に文字を追い、文字を綴っていられる時間をお金で買えるなら(例えば大学7年間とかね)それが小説の肥やしになるんじゃないかなあ、と思うわけです。

あえてお金で買える、道具に限定して!っていうことであれば、今はiPadとBluetoothキーボードかな……。あのね、Windowsパソコンで文章書いてるならかなり時間ロスしてますよ(つけっぱなしにしてない限り)。あいつらが起動するまでの時間を当たり前だと思い込まされているのはちょっと非人道的です。「思いついたときにサクサク書ける」っていうのめちゃめちゃ大事なんで、せめてiPhoneお持ちだったらキーボードの導入だけでも検討してみてください。

わたしが使ってるのはこれかな。折りたたみ式だと折れ目がダメになりそうで、薄くて軽い一枚板のやつを使っています。これと適当にテキストエディタアプリ(数百円でも課金したほうが結局ストレスフリーなことが多いです)で快適執筆生活を送っています。

なんか締め方が思いつかないので、最後にもう一回。
コバルトの短編小説新人賞で最終選考のドンケツに引っかかっています。伊藤影踏「高原にさす光」よかったら読んでください。よろしくお願いします。