「できるようになったこと」の連載5…本を読む

2019年1月6日

2018年、人間の形を取り戻すうちにできるようになったことをひとつずつ書いていく連載その5です。

ずっと本が読めなかった

いつごろからかはわかりませんが、そもそも本を読むのがたいして好きではなかったのかもしれない、と大学にいたころには気づいていた気がします。大学生なのでレポートやなんかのために学術書は読むのですが、趣味の読書を全くできなくなっていました。

でも「趣味の読書」というか、小説をまともに読んでいたのは高校生の一時期くらいで、ずっと雑誌とか実用書ばっかり読んでいる子供でしたし(オレンジページとかの主婦雑誌が好きでアホみたいに読む幼女だった)、大学に入ってからは忙しかったり大きく体調を崩したりして読書そのものから遠ざかってしまいました。あとTwitterはじめたし。

「本を読めない」状態がいちばんひどくなったのは2018年の夏あたりのような気がします。大学にいたころは面倒がりながらもなんとか読めていた学術書が全く読めなくなりました。10ページくらいで集中力が切れてしまうとか、そもそも目が滑って全然頭に入ってこないとか。当時は薬の処方も迷走していましたから、そういうところに体調が出ていたのかもしれません。

「読めない」ことがわかっていると、本を開くのすら億劫になります。ほぼ同時期に「書けない」状態にも陥っていたため、しばらく読み書きからは離れて過ごしました。非常につらかった。「読むこと」「書くこと」を柱に自分という人間を作り上げてきたつもりでいたのに、その柱を根こそぎ抜かれてしまった感じです。

しばらく投稿を続けていたコバルトの短編小説新人賞にも、6月を最後に投稿していません。とにかく一次創作が書けなくなりました。二次創作ならなんとかたまにひねり出すことができましたが、それも自分の文章とは思えなくてなんだか気持ち悪かった。

体調がだんだん良くなってきてからも、何も読まず、何も書かない自分に生きている意味はあるのか? とふと考えることがありました。承認欲求もあるとは思いますが、それ以上にここまですがってきた杖をなくした心細さが強かったと思います。

積ん読と図書館

2018年の10月に札幌市図書・情報館がオープンしました。

蔵書のジャンルと数を絞り、貸出をしないなど、新しい試みを多く取り入れた図書館です。広い机の席を予約することができ、また予約がなくても座り心地のいい椅子で本を読むことができます。

仕事や暮らしに関する課題解決を目的としていて、文学の棚もないので、読みたい本はないかもなあ……と思いながら暇つぶしのつもりで寄ったのですが、大間違いでした。

読みたい本めっちゃある。

正確に言えば「普段自分では絶対に買わないけど読んでみたかった本がたくさんある」のです。

そもそもハウツー系の単行本は当たり外れが大きいわりに単価が高いので全く自分で買う気にはなれません。読者層も違うので、評判がいい本が自分に合うわけでもないし。

でも図書館なら山ほど積み上げて読み放題! 合わなかったら流し読みしても、途中でやめても損をしない!

それと、久しぶりに棚の間をうろうろして読みたい本を探す楽しみを思い出しました。書店だと行く棚は決まりがちですが、図書・情報館は比較的コンパクトなワンフロアなのでちょっと歩くだけでいろいろなジャンルの本が目に入ります。

札幌の街中にこういう施設ができてくれたのは本当に嬉しいです。この図書・情報館のおかげで、私はもう一度本を開くことができるようになりました。

それでも小説からかなり長い間離れていたのは事実で、とにかく集中力が続かないことに困っていました。短編集の一篇ごとに集中力が切れてしまうので、一冊通して読み切るのに何ヶ月もかかるようなありさまです。本棚にはシュリンクのかかったままのまんがが大量に入っていますし、積んでいる小説もたくさんあります。

長編の小説を読むのは非常にハードルが高かったのですが、12月に「十二国記の新刊が出るぞ!」というニュースがありました。Twitterのタイムラインがたいへん盛り上がり、私も勢いで読んでみることにしました。

新潮の新装版を図書館で取り寄せることができたので、とりあえず最初の「月の影 影の海」を上下巻。でもやっぱりなんとなく読み始めることができなくて、上巻に手をつけたのは返却期限ギリギリになってからの12月26日でした。

でも、一気に読めたんです。

1時間半くらいTwitterに手も出さず、集中して読み切ることができました。これはおおいに物語の持つ力のおかげだとは思いますが「なんだ読めるじゃん……」と感慨深いものがありました。

相変わらず「読み始める」ことのハードルが高く、積ん読は全然減っていませんが、読み始めれば意外と読めるもんだとわかったので、今年こそ積ん読を崩していこうと思っています。